フィクション日記

しょっぱい毎日を生き抜くため、妄想力を鍛えています。

ヤクルトマジシャン

ヤクルトのパックを開けずに、中身を出す方法をご存知だろうか。

 

会社にヤクルトのお姉さんが来るので、たまにヤクルトのお姉さんからしか買えない限定商品「ヤクルト400LT」を買う。8本丸々の一連パックのやつ。 

今日もそれを購入しようとしたら、たまたま居合わせ同僚が丸っとくれた。明後日から夏休みをとる予定を忘れ、間違えて購入してしまったらしい。

 

それをありがたく自宅に持ち帰り、お腹の乳酸菌が悪玉菌と戦う様子を妄想しながら飲むのを楽しみに帰宅したら、ヤクルトのパックに穴が空いていて、袋の中で漏れていた。

お腹に優しいと評判のヤクルトも、肌と衣類には厳しい。ベトベトするし、ヤクルトの独特のにおいが強烈に残る。爽やかな甘みもこのベタつきでは暴力である。

 

しまったな、どこかにぶつけたかと思い、くるくるとパックの中のおもらし犯人探しをしていたら、予想外の事態が発生していた。

パックど真ん中の一本の蓋が、パッキングされた状態のまま開いていたのである。蓋が開いているというより、ただ乗せられていただけと言う方が正しいかもしれない。

 

これはどういうことだ。不良品か。不良品だとしても、どうやってここまで残りの半分は残れたんだ。不良品でないとしたら人為的?でもパッキングに傷一つつけずにどうやって?毒とか入れようとしたなら、普通に上から穴開けた方が楽じゃない?もしかしてマジシャンの犯行?

 

自分は他の人に比べてよく不良品をつかまされたり、飲食店でオーダーミスをされることが多いのだが、こういう不可思議系は初めてだ。

 

明日ヤクルトのお姉さんにきいてみようかな。クレームとかじゃなくて、純粋に発生過程を知りたい。

証拠品としてその怪しいヤクルトの容器を明日職場へ持っていこうと考えたが、どう見てもただの飲み終わりの容器にしか見えないのでやめた。

「自分で飲んだの忘れて、一本せしめようとしてるんじゃないか」と思われたら、あの白くて細い指がキレイなヤクルトのお姉さんが、もう来てくれないかもしれないし。