フィクション日記

しょっぱい毎日を生き抜くため、妄想力を鍛えています。

妖怪柑橘汁飛ばし

自分はメガネをかけているが、実は目はそこまで悪く無い。ガチャ目だから、むしろ片目だけならいい方かもしれない。

 

でもメガネは手放せない。

人との距離間が少し感じ取れて安心する。言うなれば、動物園の柵みたいなかんじ。透明だから気持ち程度だけど。

だから職場の飲み会とかで、「いつもメガネしてるよね、目どれくらい悪いの?」ときかれるとドキっとする。

 

いえいえ、目はそこまで悪く無いんですが、世間さまとの遮蔽物として便利だから使ってるんですよ。しかもレンズの部分は透明だから、視界に影響はないんです。便利ですよね。色付きも考えたんですけど、カラーチャートとか見るのに不便そうだし、ちょっと人相悪く見えそうだし。そこはね、仕事優先ってことなんですよ。あ、経理の山下さんも実は同じ理由かな、でもあの人フチなしフレームだからどうだろう。ちょっときいてみようかな。

 

こんな返答をしたら場が凍りつくのは目に見えているし、自分でも飲み会にこんな奴がいたらキモいと思う。

だから適当にあーとかうーとか適当に時間を稼いでると、相手は興味を失い、また別の話題になる。新しい話題は、カタカナばかりでよくわからないけど、これでいいんだ。

 

しばらくすると、誰かが頼んだ唐揚げがくる。そして付属のレモンを、目の前の経理の山下さんがかけてくれる。

 

その時、ピッとレモンの汁が山下さんの目元に飛んだ。でも目には入らず、メガネでガード。

こういうのメガネあるある。

こういう時だけメガネがあってよかったわと山下さんは言っていた。

 

これだ。今度からこれでいこう。

 

あ、メガネですか?これね、レモンガードなんですよ。ほら、柑橘絞るときに目に汁が入ったりするでしょう?それがないんですよ。

 

…大丈夫かな。山下さんは許されて、自分は許されない気がする。

そもそも自分は唐揚げにレモン絞らない派だし、みんなの唐揚げにレモン絞る係とか恐れ多くてできないし。

 

そう思ってメニューを見たら、生搾りレモンサワーの文字。速攻頼んだら、すでに破砕された果肉がたっぷり入ったやつだった。

おいしいんだけど、ちがう。望んだスタイルじゃない。こういうときにかぎって。

 

こんな妖怪いないかな。妖怪柑橘汁飛ばし。呼んだら目元にピッてやってくれるの。

報酬はレモンについてくる唐揚げ。